

かつて、昇仙峡は切り立った岩壁と急流が行く手を阻み、誰もが「ここに道を通すなんて無理だ」とあきらめていた時代――その常識に真っ向から挑んだ一人の男がいました。その名は、長田円右衛門(おさだ
えんえもん)。
江戸時代末期、地域の発展と人々の生活のために、彼は自らの私財と人生をかけて「御岳昇仙峡新道」の開削を始めます。
岩を砕き、崖を削り、命がけで築いた遊歩道は、のちに昇仙峡を全国有数の観光地へと導く礎となりました。
円右衛門伝承館では、その偉業を伝えるため、当時の工事道具や古文書、古写真など貴重な資料を展示。
まるで時を超えて、円右衛門本人の声が聞こえてくるような空間が広がっています。


かつて、昇仙峡では本物の水晶が採掘されていた時代がありました。
山の奥深く、灯りも届かぬ岩の隙間に分け入り、一つひとつ手で掘り出されていた――そんな歴史の一端を、今に伝える展示が、この「水晶洞窟再現コーナー」です。円右衛門伝承館に来られた際はぜひ覗いてみてください。

伝承館のすぐそばには、今も静かに佇むふたつの歴史的な存在があります。
ひとつは、「一天石(いってんせき)」。
これは、1612年に昇仙峡の乙女鉱山から産出されたと伝わる貴重な水晶で、現在は小さな祠に大切に祀られています。
長い時を経てもなお澄み切ったその輝きは、かつてこの地が“水晶の里”と呼ばれた証そのもの。
訪れた人々の心をそっと整えてくれるような、神秘的な空気が漂います。

その祠のすぐ隣には、昇仙峡の礎を築いた人物――長田円右衛門の碑も建立されています。
自ら道を切り拓き、谷を観光地へと変えたその偉業は、今もこの地に深く根を下ろしています。


ACCESS
JR甲府駅からバスで約50分、終点「昇仙峡滝上」下車すぐ。
お車でもアクセスしやすく、無料駐車場も完備。ロープウェイや仙娥滝の観光と合わせて、気軽にお立ち寄りいただけます。